異次元緩和のマーケット(04/03-11)

4月3−4日に行われた日銀会合によって、市場のトレンドが大きく変わりました。
金融緩和⇒大幅に株高・円安となっています。債券は期待前の水準に是正されています。

前提となる国際経済

①EU:キプロス問題。銀行が経営破綻の危機!→なるべく公的資金注入(財政負担)は避けたい→預金者からお金を取るしかない(預金に課税)→預金者「それなら預金を止める」→首相「嘘!嘘!でもお金足りないから高額預金者には課税ね!」→某記事「高額預金者への課税はEUの他の地域でもやるといいね!財政負担減らせる!」→マーケットは大混乱。

キプロスで預金課税が支持されうる根拠の1つは、預金の大部分がロシアから行われている、ということ。キプロス市民から集める税金よりも、受益者負担の考え方が採択されるべきとの意見が強い。

アメリカ:各種指標が市場予想を下回る。4月第1週にはいくつか重要な指標が公開された。経済が回復基調なのは変化なしだが、市場が予想していたほどは良くなっているわけではない。

③中国:アメリカと同様、経済回復基調だが、市場の予想に比べると経済指標は好ましくない。さらに、金融・不動産に対しての規制強化が懸念されている。というのも、金融=インフレ懸念+貿易黒字拡大による中国元の為替レート強化=引き締めが必要、不動産=投機目的の売買が過度に増加+バブル懸念=規制が必要、という状態だから。

⇒国際経済の状況としては、EUを除けば実態経済はまずまずの調子。金融市場に注目すると、どこも好ましい状態ではない。必然的に、日本に逃げ込む形になりそうな気配だった。ただ、日銀会合の結果が出るまでは何とも言えない状態。

日銀会合と異次元緩和

日本銀行が3-4日に行った政策決定会合では大胆な金融緩和が決定された。
「質的・量的に次元の違う緩和」と呼ばれている。

①2年以内に2%インフレ達成を目標。
②2年でバランスシートを2倍に。年60-70兆増やす。
国債保有残高を年50兆増やす。買い入れ対象を全ゾーンに拡大。
不動産投資信託、上場投資信託などリスク資産を買い増し(10-20兆)。

一般的なケインズの経済学を考えると、日銀が市場・各銀行から国債を買い入れることによって、市場・銀行に資金が流れ込むことになる。銀行はその資金を民間に貸し出して、企業は借りたお金で投資を行う。

ただ、実際には各銀行の貸出額は大きくない。ほとんどの資金が、①国債による運用 ②口座に余った状態 となっている。ビジネスモデルとしては手数料によるところが大きい。先日、銀行員が「投資信託を売りさえすれば手数料が入る。売った相手が儲かるか損するかは関係ない。だから良くない商品でも売り込む」という話が記事になっていた通りだ。

また、それでも貸出額はこの1年で増加しているが、資金需要の目的は、①海外M&Aのための資金が必要 ②中小企業が売却されるための費用を賄うため、といったものが多い。どちらも民間の設備投資を増加させるものではない(①は国際資本収支を増加させるというメリットはあるが…)。したがって、金融的手法とは別に、産業の改善が必要とな
る。

では追加緩和に意味はないのか?と言うと、プラス面は以下の通り。

(需要面)
物価上昇⇒名目賃金上昇⇒消費増加。
為替レート下落⇒輸出増加+輸入減少⇒貿易収支改善。

(供給面)
売上と費用ともに上昇。効果は微妙。
ただ、需給トータルで国民所得は上昇。

(金融面)
為替レート下落+リスク資産嗜好⇒株価上昇。
株価(資産価値)が上がれば、事業への資金投下を行いやすい。

(政策面)
金融政策が上手く進むと、政府の信頼獲得・政策実行の理解を得やすくなる。
財政政策や産業改革による問題解決の潤滑油になる。

マーケットの反応

為替レートは急落。緩和期待による円売りと、国際経済への懸念による外貨売りで、1ドル=90-95円の間で揺れていたのが、一気に100円近くまで下落した。まだ落としどころが読み切れない状態だが、130円まで行くという識者もいる一方で、海外の状況次第では一時的に上がる懸念も拭いきれない。

株価は急騰。具体的には、①円安=貿易収支改善=輸出関連株が買われる、②金融緩和=利子率が下がる=金融・不動産などの資産価格が相対的に上昇=金融・不動産株に買いが入る、③日銀が購入すると宣言した不動産投資信託や上場投資信託は「後で必ず買われる商品」=10-20兆の需要増加が決まっている=価格が必ず上昇する=買う、という3つの要因が大きい。

長期債は、利回り0.315%と過去最低を更新した。価格と利回りは反対に動くので、需要が大きかったということ。日銀が必ず買う=価格が必ず上がる=買う、という動き。あまりにも市場の反応が大きく、取引量が膨れ上がったため、4/5には取引所で2度もシステムダウンが起きた。リーマンショック以来のアクシデントだ。ただ、材料が出尽くしたところで利益確定売りが続き、現在は0.55-0.65程度にまで戻っている。

4/11 14時頃の経済指標

<株式>
・TOPIX:1141.44ポイント ⇒4/2より約150ポイント上昇。
日経平均株価:13,459円32銭 ⇒4/2より約1500円上昇。

<為替>
・1ドル=99円54銭 ⇒4/2より約6円下落。
・1ユーロ=130円02銭 ⇒4/2より約11円下落。

<債券>
・現物10年債利回り:0.56% ⇒4/2と同水準。
先物6月価格:143円63銭 ⇒30年債入札不調で下落。4/3より2円安。

つぶやき

更新をサボっておいて言うのもアレだけど、このスタイルで記事を書くと結構良い感じじゃないっすかね。