10月29日のマーケット

2012年10月29日のニュース、経済指標などをまとめました。いくつか変動要因があったものの、明日の日銀会合まで様子身が続きます。


ニュース

●日本「新生銀:2年後に初のヘルスケアリート上場目指す、1000億円規模視野」
Bloomberg http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MCH5XO6JTSEM01.html

高齢化を背景に需要が増す介護施設や高齢者用住宅を運用資産対象とする日本版不動産投資信託 (Jリート)について、今後2年以内に上場を目指す考えだ。日本で初のヘルスケア特化型の上場リートの実現に取り組む。上場時の運用資産規模は1000億円程度を見込む。

「スポンサー(設立母体)となって、日本でヘルスケアリートの市場を切り開いていきたい」と語り、以下の点を指摘している。

・市場規模として高い成長性(日本の不動産で5年後に規模が2倍になるタイプの資産は他にない)

・ヘルスケア施設がオフィスビル などの不動産資産と違い、景気の変動を受けにくい

日本での有料老人ホームと高齢者専用賃貸住宅を合計したヘルスケア関連施設の整備状況は、介護保険法が施行された2000年から2011年までに戸数は約8倍の30万戸に急増。今後5年後にはさらに60万戸に拡大し、6兆円の資金が必要になる見込みと分析している。

なお、米国のヘルスケアリートは11銘柄で時価総額合計は約5.1兆円、米国リート全体の15.1%を占める。

> memo: まさに似たような議論をした直後だったのでメモ。環境・農業・医療・介護といった成長分野と金融商品を組み合わせることで、それ自体が新たなビジネスとなるのと同時に、既存の問題解決にも繋がる可能性があります。例えば、介護分野では一部の悪質な介護ビジネスの存在が指摘されています。スタッフの給料が不当に搾取されている・高齢者へのケアがおざなりになっている…などなど。ここで、投資信託を通じて市場のチェックが入ることでサービスの質も担保されるようになったら素晴らしいですね。個人的には、米国では不動産を介する他にどのような事例があるか気になります。



●米国「ハリケーン「サンディ」、米NJ州に接近中−株取引も停止」
Bloomberg http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MCMLIF6KLVR901.html

大型ハリケーン「サンディ」は、約6000万人が住む米東海岸に向かっている。29日はバージニア州からマサチューセッツ州まで学校や政府機関が閉鎖され、米株式市場の取引も取りやめとなった。大統領選挙の遊説にも影響が出ている。

他の2つの低気圧との合体が予想され、米気象庁(NWS)はこの現象を「フランケンストーム(破壊的な勢力のハリケーン)」の発生と呼んでいる。カリブ海を移動中、65人の死者が出ている。被害額は180億ドル(約1兆4300億円)に上り、1000万人が1週間以上の停電に見舞われる可能性がある。

> memo: 台風のエネルギーって時には地震の10倍以上になるらしいですね。自然災害が経済に与える経済被害が年々増加している、ということを根拠に異常気象が増えている(=気候変動の問題だ)という指摘がしばしば聴かれるのですが実際はどうなのでしょうか。経済成長している限りは必然的に被害の金額も大きくなると思うのですが、その辺りの議論が気になります。



EU「10月の独インフレ率2.1%、前月と同水準−予想は鈍化」
Bloomberg http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MCNNOA6TTDTM01.html

独連邦統計庁が29日発表した10月の消費者物価指数(CPI)速報値は、欧州連合(EU)基準で前年同月比2.1%上昇。前月と同水準を維持した。エネルギーの値下がりを食料価格の上昇が打ち消し、インフレ率は事前予想を上回った。

世界的な景気減速で需要が抑えられたことから、原油相場は過去1カ月で約7%下落しており、景気低迷の中で企業は、コスト上昇分を製品価格に転嫁する余地も限られている状態だ。

ドイツのインフレが低下傾向にあるのは間違いないと考えられており、今回の速報値はECBにとって国債購入計画に対する支持をドイツで取り付ける後押しとなるか。

> memo: ちなみに9月:中国のCPI前年同月比1.9%(鈍化)、日本:-0.1%(予想を上回る)、ユーロ圏:2.7%(予想を上回る)だそうです。



●アジア「インド中銀:当面はインフレを警戒−赤字縮小なら景気支援も」
Bloomberg http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MCNMNZ6TTDTD01.html

インド準備銀行(中央銀行)は29日、現時点ではインフレに注目する必要があるものの、物価上昇圧力が緩和し、財政・貿易赤字が縮小した場合、将来的に景気を支援する余地が出てくるとの見解を示した。

「金融政策は当面、インフレを警戒する必要があるが、可能な程度で成長を支えるために利用できる余地を活用する。インフレと赤字の脅威が後退した場合、景気懸念への対応で金融政策を用いる余地が生じるだろう」と説明した。

30日に政策金利を決定会合で8%据え置きで、4会合連続の金利維持となる。報告で、2013年3月までの今年度の経済成長率は5.7%(7月時点では6.5%)との見通しを示した。インフレ率 については平均7.7%(従来は7.3%)を予想。

参考(The Reserve Bank of India)
Outlook: http://rbi.org.in/scripts/BS_PressReleaseDisplay.aspx?prid=27478
Annual Policy: http://www.rbi.org.in/scripts/Annualpolicy.aspx

> memo: チャイナリスクが指摘されるようになってから、安全な投資先として真っ先に挙がるのがインド。経済指標の面でも金利・インフレともに高い=リスク・リターンが典型的な途上国型ということでしょうか。


経済指標

日経平均株価 8929円34銭 前週末比−3円72銭(0.04%)
TOPIX 740.30ポイント 前週末比−0.93ポイント(0.1%)
USDJPY 79.53〜79.75 ※79.73で前日比+0.087(0.109%)
EURJPY 102.52〜103.28 ※102.94で前日比−0.106(0.103%)
10年物債券 利回り0.77% 前週末比+0.5ベーシスポイント

※為替レートは30日0:50時点で前日同時間、Bloombergマーケット速報より。 



[日経平均株価][TOPIX]

東京株式相場は小幅続落。あすの日本銀行金融政策決定会合を前に様子見姿勢が強まる中、業績計画の下方修正を受けたホンダ、NTTドコモが急落。ホンダ売りの影響は自動車株全般に及び、東証1部33業種の下落率1位は輸送用機器だった。為替の円安一服も、終日上値の抑制要因となった。

7−9月期業績は悪い企業が多いが、「株価もすでに低い水準にあり、一段の大幅安にはなりにくい」と指摘。為替の円高の動きに反し日本株底堅い印象といい、「日銀の追加緩和期待が下支えになっているようだ」とのこと。

米商務省:7−9月期の実質GDP速報値が年率で前期比2%増、また、中国国家統計局:9月の工業セクターの企業利益は、前年同月比7.8%増の4643億元(約5兆9000億円)で今年最大の下げとなった8月の6.2%減から一転した。海外統計の堅調を受けきょうの日本株は反発。

via Bloomberg「本株は小幅続落、業績下振れホンダ、ドコモ急落−円安一服」
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MCMKHK07SXKX01.html



[USDJPY][EURJPY]

東京外国為替市場ではユーロが下落。スペインの失業率が過去最悪となったことやギリシャの債務再編策をめぐる不透明感を背景に、ユーロに売り圧力がかかった。 

スペイン:7−9月の失業率は25.02%と、前期の24.6%から上昇。少なくとも1976年以降で最悪となった。欧州債市場ではスペイン10年債利回りが週間ベースで8月31日終了週以降で最大の上げとなった。

ギリシャ:ドイツのショイブレ財務相「公的部門や民間の債券保有者にギリシャ国債で損失負担を求めることは非現実的」。欧州委員会欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金IMF)「公的部門に多額の損失負担を求める内容で債務再編を提案」。

スペインが支援要を必要とする状況は変わらないが、失業率の悪化によって、一段の景気減速につながりかねない緊縮策を伴う支援要請に難色を示す可能性がある。また、ギリシャの債務削減問題についてもドイツからの批判など、ユーロ圏が一枚岩になり切れない状況が浮き彫り。「欧州の政治的リスクがユーロ売りに結び付いてもおかしくないとのこと。

一方、ドル・円相場は日本銀行金融政策決定会合を翌日に控えて、早朝に付けた1ドル=79円56銭から79円75銭まで値を戻した後は、小幅な値動きにとどまった。前週末には一時79円50銭と、4営業日ぶりの水準までドル安・円高が進んでいた。

via Bloomberg「ユーロが下落、欧州景気懸念根強い−ドル・円は79円後半」
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MCMM6G6KLVR501.html



[債券]

債券相場は反落。前週末の米国債相場が上昇した流れを引き継ぎ買いが先行したものの、高値警戒感やあすの日本銀行金融政策決定会合を控えて慎重姿勢が強まり、下げに転じた。超長期債を中心に売りが出て、相場全体の重しとなった。

日銀の追加緩和決定後に材料出尽くし感が広がることを見込んで、長いゾーンは先回りした動きで売られやすい。10年債入札を控え、0.8%クーポン(表面利率)確保で0.7%台半ばでは重くなる、海外市場では利回り曲線が平たん化したが、国内の超長期債利回り上昇の修正には時間かかるとのこと。

現物債市場で長期金利の指標となる新発10年物の325回債利回りは同横ばいの0.765%で開始。午前は17日以来の低水準の0.765%に並んで推移した。午後に入ると若干水準を切り上げ、0.5ベーシスポイント(bp)高い0.77%を付けた。

あすに日銀の金融政策決定会合を控えて様子見姿勢が強まっている。国内では、11月1日に10年債入札、特例公債法案の行方、米国では雇用統計、大統領選挙など注目イベントが多く、取引を手掛けにくい状態。

via Bloomberg「債券は反落、日銀決定会合控え慎重姿勢−超長期債売りが重し」
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MCMJNT6KLVR901.html



[まとめ]

・全体的に明日の日銀会合まで様子見。
・米中は指標改善、EUはリスク顕在化、国内企業は業績悪化。
・対ユーロで円安・対ドルでやや高値、株価は下落。
・世界的に超長金利が売られる流れ→日銀会合の後に変動ないことを見込んでここで売り。


その他

白川総裁苦戦の歴史的円高に是正の兆し、海外M&A活発化で
Bloomberg http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MCHPOT6S972N01.html

M&Aによる円高是正の流れを解説していた記事がいい感じにまとまっていました。様々な論客が行ってきた「円高だからこそ海外に投資を!」とか「企業に資金援助を!」といったここ1年の主張がまさに証明されつつあるのでしょうか。

日銀会合の結果によっては一時減速しつつも、全体的に円安方面へ動いていきそうです。個人的な予想としては、追加緩和は行うが市場の期待以下で、円高金融ファシリティは再延長。というかそうでもしないと円高で苦しんだ分を取り返せないかと。

あと、新興国との価格競争・商品が売れなくなったこと、に関しては円高と切り離して考えるべきではないでしょうか。たとえ円安が続いていたとしても、2000年代半ばの好景気状態が継続していたとしてもイノベーションが必要になるのではないでしょうか。