10月30日のマーケット

2012年10月30日のニュース、経済指標などをまとめました。追加緩和の発表を終え、市場にとって悪材料が目立ち始めてきたところです。


ニュース

●日本1「日銀会合:資産購入基金を11兆円増額、無制限の貸出支援基金も新設」
Bloomberg http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MCOZ2S6TTDSW01.html

日本銀行は30日開いた金融政策決定会合で、長期国債の買い入れ額を5兆円増額するなどして、資産買い入れ等基金における資産購入を「55兆円」から「66兆円」に拡大することを全員一致で決定した。同基金はこれで計91兆円となり、80兆円から11兆円の拡大。03年5月以来となる2カ月連続の金融緩和に踏み切った。 

・長期国債と短期国債がそれぞれ5兆円
・CP等0.1兆円
社債等0.3兆円
・指数連動型上場投資信託ETF)を0.5兆円
不動産投資信託J−REIT)を0.01兆円
・固定金利方式の共通担保オペは25兆円で据え置き

また、「貸出増加を支援するための資金供給」を新たに創設。預金取扱金融機関の希望に応じてその全額を日銀が上限なし・無制限で資金供給する。金利は貸付実行時の誘導目標金利(現在0.1%)による長期固定金利で、期間は各取引先の希望に応じて1年、2年または3年とし、最長4年までのロールオーバー可能とする。

なお、国内経済については、景気は弱含みになっているとして判断を下方修正。中国リスクを十分に織り込んでいなかった9月短観の業況判断DIの悪化、設備投資計画の下方修正が見込まれる。

また、半年に1度の経済・物価情勢の展望(展望リポート)では、注目された2014年度の消費者物価指数(生鮮食品除くコアCPI)前年比の見通し(委員の中央値)は消費税率引き上げの影響を除いてプラス0.8%。当面の目標とする「1%」には届かず、達成の時期を後ずれさせた。



●日本2「日銀総裁:委員2人が反対表明−1%の物価見通しと緩和継続条件」
Bloomberg http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MCP5F76TTDVP01.html

日銀は会合後、政府と連名による「デフレ脱却に向けた取り組みについて」という声明を発表。「政府および日本銀行は、わが国経済にとって、デフレから早期に脱却し、物価安定のもとでの持続的成長経路に復帰することが極めて重要な課題であるとの認識を共有しており、一体となってこの課題の達成に最大限の努力を行う」と表明。白川総裁は会見で、政府・日銀が会合後に共同声明を公表するのは初めてであることを明らかにした。

今回新設する「貸出増加を支援するための資金供給」については「金融機関の一段の積極的な行動と企業、家計の前向きな資金需要の増加を促す」のが目的で、「金融機関が行う貸し出しについて、円ベース、外貨ベースの貸し出しを問わず、希望すれば全額、長期固定でファイナンスする」と言明。

03年5月以来となる2カ月連続の金融緩和に踏み切った理由については「この間の一番大きな変化はやはり、海外経済の減速が強まっていることだ。9月の段階でもそのことは認識したが、その後の経済の展開をみても減速が強まっている。海外経済の減速が日本の輸出・生産の減少を通じて内需に影響してくる」と指摘。

※声明文[PDF注意]はこちら→
http://www.mof.go.jp/public_relations/statement/other/20121030.pdf

日銀が「ゼロ金利の継続」「金融緩和の推進」「1%のインフレ・ターゲット」の立場を取り、政府には「マクロ経済政策運営」に加えて「デフレ構造からの脱却・経済構造の変革」を要求している。



EU1「独仏財務相ギリシャのユーロ圏残留に向けては11月が鍵に」
Bloomberg http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MCPLLC6K50Z001.html

30日ベルリン、ショイブレ独財務相との共同記者会見にて、ドイツとフランスは今後の4週間で、ギリシャが市場を不安定化させることを阻止する方策を模索すると、モスコビシ仏財務相が言明した。

財務省の当局者らは31日に予定されているギリシャ関連の電話会議に向けた下準備として、前日に続いてブリュッセルで交渉を行っている。「不透明を解消するため、われわれは11月も包括的な解決策を模索し続ける、ギリシャがユーロ圏にとどまりユーロ圏全体を守るために必要な行動を取る」と強調。



●EU2「仏はギリシャのユーロ離脱に備え11年に非公式会合−前財務相
Bloomberg http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MCPN096TTDVN01.html

フランス政府は2011年11月に、ギリシャのユーロ圏離脱に備えるために1回の会合を持ったと、バロワン前財務相が新著「Crisis Journal」の中で明らかにしている。著書の抜粋をレクスプレス誌が掲載した。

「会合は財務省の6階の私のオフィスで行われた。文書はなく記録もない。会合の目的が知られれば破滅的な結果をもたらすと誰もが分かっていた。この非公式の会合は実用的な理論を組み立てるためのものだった。会合を持たないのは無責任だし、それについて口外するのは考えられないことだった」という。

原文:“The meeting took place in my office on the sixth floor of the finance ministry,” Baroin wrote in his forthcoming book, “Crisis Journal,” according to L’Express. “It was a discussion without documents. No trace. Everyone knew the point of the meeting, if known, could have disasterous consequences. This unofficial meeting would be to form working theories. It would be irresponsible not to hold it but crazy to speak about it.”


※2012年8月末には銀行でのギリシャ対策が記事になっています。
French Banks Prepare to Pull Out of Greece:The New York Times
http://nyti.ms/OvbLGA


用語メモ

●「固定金利方式・共通担保資金供給オペレーション

新型オペレーションは、「新型オペ」とも呼ばれる。日本銀行公開市場操作の一つで、日本銀行が金融機関に対して、適格担保を裏づけに、政策金利と同水準の極めて低い固定金利で一定期間の資金を供給する(貸し出す)ものである。

※これに対して、従来のオペは「金利入札方式」で、高い金利を提示した金融機関から順番に資金を調達できる仕組みである。

新型オペは、急激な円高と株安で景気が悪化する恐れが高まったのを受け、2009年12月の日本銀行の臨時金融政策決定会合で初めて導入された。導入当初は、年0.1%の固定金利、期間3カ月の資金を短期金融市場に約10兆円供給した。

その効果としては、資金需給にかかわらず、超低金利の資金を供給し続けることで、長めの短期金利を押し下げることができるとのこと。

また、2010年8月には、期間3カ月に加えて、期間6カ月の資金供給も導入した。なお、新型オペは、担保対象を流動性の高い国債などに広げており、金融機関にとっても使い勝手がよいとのこと。

via 金融経済用語集「新型オペレーションとは」
http://www.ifinance.ne.jp/glossary/market/mar161.html


経済指標

日経平均株価 8841円98銭 前日比−87円36銭(1%)
TOPIX 733.46ポイント 前日比−6.84ポイント(0.9%)
USD-JPY 79.28〜80.14 ※79.61で前日比−0.189(0.237%)
EUR-JPY 102.18〜103.41 ※103.23で前日比+0.255(0.248%)
10年物国債 利回り0.76% 前日比−1ベーシスポイント

※為替レートは31日02:29時点で前日同時間、Bloombergマーケット速報より。 



[日経平均株価][TOPIX]

東京株式相場は3日続落、日本銀行の追加金融緩和策に対する失望売りが取引終盤に膨らみ、保険など金融株、不動産株が東証1部の下落率上位に並んだ。為替の円高進行が嫌気され、輸送用機器など輸出関連株も軟調。海外原油市況の下げを受け、鉱業や石油・石炭製品など資源関連株は終日安かった。

米国の個人消費の堅調な伸びや為替の落ち着きを好感し、朝方から輸出関連株に買いが先行。その後、日銀の金融緩和に対する思惑からこう着した展開が続いたものの、終盤に追加緩和の内容が明らかになると、失望売りから先物主導で急落した。

日銀の発表後、東京外国為替市場のドル・円相場は一時1ドル=79円28銭、ユーロ・円は一時1ユーロ=102円18銭まで円高に振れた。これまで日銀の金融緩和期待で日本株は上がっていただけに、支えがなくなって企業業績の悪さや米国に上陸したハリケーンなどの悪材料に焦点が集まった。

via「日本株3日続落、日銀緩和発表後に売り−資産買い入れ増額も失望」
Bloomberg http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MCOF4D1A74E901.html



[USD-JPY][EUR-JPY]

東京外国為替市場では、午後の取引で円が反発し、対ドルでは1ドル=79円台前半で約1週間ぶりの円高値を付けた。日本銀行がこの日決定した追加金融緩和の規模に対して失望感が広がり、円買いが進んだ。

ドル・円相場は日銀の政策発表直後には80円14銭まで円安が進んだが、すぐに円買いが活発化し、一時は79円28銭と、22日以来の水準まで円高が進行。午後4時25分現在は79円48銭付近で取引されている。円は主要16通貨に対して全面高となる場面も見られ、対ユーロでは一時1ユーロ=102円18銭と、16日以来の高値を付けた。

10兆円程度の資産買い入れ増額は最低線と見られており、15兆円までいけなかったというのは、マーケットにとってはかなりがっかりの内容だった。

via「円反発、対ドルで1週ぶり高値−日銀の追加緩和規模に失望感」
Bloomberg http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MCOH816JIJWR01.html



[債券]

債券相場は反発。朝方発表の鉱工業生産指数が予想を下回ったことなどから買いが先行。その後も日銀による大幅緩和を見込んだ買いなどが優勢となり、先物は3カ月ぶり高値を付けた。しかし、午後の取引終盤に発表された追加緩和策は市場の予想範囲内との見方が出ており、急速に上げ幅を縮めた。

資産買い入れ等基金の91兆円程度への増額はおおむね市場予想に沿った内容だが、かなり積極的な緩和策を予想していた向きにとってはややネガティブか。発表直後に若干売られたが、それほど期待しておらず、織り込みと同程度だったので戻した。為替に働きかけるような政策がなく失望された面もあるが、ここから一方的に円高が進むとも考えづらく、材料出尽くしで平常のレンジ相場に戻ると見られる。

現物債市場で長期金利 の指標となる新発10年物の325回債利回りは同1ベーシスポイント(bp)低下の0.76%で始まり、午後は1.5bp低下の0.755%と、16日以来の低水準を付けた。日銀発表後にいったん横ばいの0.77%を付けた後、その後は0.76%で推移している。

via「債券反発、日銀緩和発表後は上げ幅縮小−弱い生産受けて朝方買い先行」
Bloomberg http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MCOEFE6JIJZA01.html



[まとめ]

・金融緩和が予想の範囲内/やや期待外れ。
・一時的に円安→円高方向へ振れる。
・一時的に債券売り→元の水準へ。
・為替/業績悪化/ハリケーンの悪影響から株価マイナス。


感想

日銀の追加緩和については先日の予想通りでした。定性的な予想ではなく、具体的な数値まで定量的に予測できるようになりたいところです。

ニュースをチェックする過程で海外の記事にも目を通すのですが、あまり訳されていないようなものを探してこのブログで扱うのも面白いかもしれない、と思いつつあります。論文の要約などもいいですね。